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11 タイの友だち


私が最初にバンコク便に乗務したのは1970年の2月です。滞在していたホテルに、シルクやコットンの小物とファッションジュエリーを扱う店がありました。経営者のお嬢さんのレックとマユリー姉妹と私は、すぐに親しくなり、バンコクに行けばいつも一緒に過ごすようになりました。10代だった彼女たちと、22歳だった私の長い長い付き合いの始まりです。


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                                 バンコク郊外  どこまでも続く椰子の林


当時のバンコクのタクシーは、日本で廃車になった車を輸入したものだったと聴きましたが、ポンコツ寸前ではあってもちゃんとエアコンがついて、とても便利な庶民の足です。

メーターがついているものの実際には使わず、お客は乗る前に行き先を運転手に告げて料金交渉をするのです。高いと思えばやり過ごし、納得行けば乗り込みます。日本人の私がいると高い事言うからと、交渉している間「あなたは見えないところ隠れてて!」とよくレックに言われました。


タクシーよりもっと安い「トゥクトゥク」と言うのにもよく乗りました。二人乗りの幌つき馬車をオートバイが引くような三輪の乗り物で、ガタガタ揺れるしうるさいし、決して乗り心地の良いものではありませんが、風を切ってぶっ飛ばすのが面白くて大好きでした。


当時は電車も地下鉄もなく、郊外へ行くには汽車、街中ではバスが公共の乗り物です。バスも解体寸前のような、ドアも窓も閉まらないものに、ラッシュ時には人が鈴なりにぶら下がって乗ります。最初の頃運賃が日本円で5円だったように記憶しています。
1980年代には窓の閉まる、エアコン付きのバスが走るようになり、とても快適になりました。
彼女たちと少し遠出するには、たまにお父さんの車で連れて行ってもらえる時以外は、これらの乗り物を利用しますが、バスの時はいつも「お財布気をつけて!」と言われました。


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        縦横に張り巡らされた運河  貧しい人々には生活の場です


 仏教徒が国民の95%を占めるタイでは、街中にも沢山の寺院や仏塔がありますが、どこでも土地の人々と様々な供え物、ろうそく、線香で大変賑わっていた光景を思い出します。


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                            寺院の庭


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                                寺院の内部

日本でも家に神棚や仏壇があった様に、また、庭にお稲荷さんを祭っている家があった様に、レックたちの家にはもちろん、多くの店やレストランにもタイ式の小さな仏壇がありましたし、庭のある家や会社はほとんど全てに外用の仏壇が立てられていました。
レックたち一家も敬虔な仏教徒です。彼女たちは街に出る時、乗り物の中からでもこれらの寺院などを見つけると、必ずそちらを向いて手を合わせていました。


私がレックとその家族に最後に会ったのは、1990年に夫と一緒に行った時で、一週間ほど家に泊めていただきました。その頃は二人とも外資系の企業のOLとして働いていましたが、わざわざ休暇をとって迎えてくれたのです。その後は家族で遊びに行く機会もないまま、たまに手紙をやり取りするだけの関係になってしまいました。


その頃以後のタイは、学生運動、革命、通貨危機、そして最近の政界のスキャンダルなどに揺れながらも、経済発展を続けているように私は遠くから感じているのですが、私が出会った大勢の穏やかで謙虚な人々の生活も、経済成長と共に慌しくなって行っているのでしょうか。


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 郊外の住宅地    右はレックの家


仕事を通じて出会った人々の中で、今、最も会いたい友だちはレックとマユリーです。


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めぎ

素敵な思い出ですね~また会うことができるといいですね。
うちのドイツ人も若い頃に行ったアジアの国の話を時々しますが、もうすっかり変わってしまったようで、昔の素朴な良い思い出を壊したくないと言って、彼は行ったことのある国には行こうとしません。
当時の友達と最後に会ったのも、もう10年くらい前のことになりました。それもヨーロッパでです。
by めぎ (2018-11-09 05:12) 

もとこさん。

めぎ様、ドイツ人様のお気持ちわかるような気が致します。どの国も時代と共に変わりますし、近代化したり進歩があるのは当たり前なのですが、勝手ですが、ノスタルジックな思い出も大切にしまって置きたいし・・・
日本も他国からはそう見られているのでしょうね。
by もとこさん。 (2018-11-09 23:30) 

もとこさん。

xml_xsl様、ひろ様、nice!を有り難うございます。
by もとこさん。 (2018-11-09 23:31) 

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